会誌「電力土木」

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電力土木回想

「人との出会い」に支えられた電力土木40年

 

溝 上   建 西日本技術開発? 常務取締役 (元九州電力? 執行役員 水力発電本部長)

1. はじめに
 アフターコロナの中,みなさまいかがお過ごしでしょうか。ここ数年の新型コロナの流行で強いられた非接触最優先の生活が終わり,人との接触も徐々に復活してきました。しかし,リモート環境が整った上に働き方改革や効率化を進めようという世の中の風潮から,社内外打合わせや学会会議,発表会などのリモート化が進んでおり,「『人との出会い』という機会が減ったなあ」と思う今日この頃です。
 そのような時に本稿の執筆依頼を受け,さて何をお話すれば…と思い悩んでいたところ,前述の「人との出会い」に関する危惧から,ふと10年ほど前に頂いた挨拶状のことを思い出しました。それは,九電に入社して間もない頃に出会って以来,40年近く交流を続けさせてもらっていた西好一氏(元電力中央研究所理事)からのご退職の挨拶状で,「過去に感謝し,現在を信頼し,そして未来に希望を抱く」という言葉で始まり,「幾多の俊英との出会いと交流から得られた財産」で締めくくられていました。
 今改めて読み返してみると,出会い,交流,財産という言葉の重みをしみじみと感じている自分に気づきました。その訳を考えてみると,2016年の熊本地震のときに経験した水力発電所の復旧業務を思い出したからでした。それは,地震で水力発電所水槽が損壊して発電用水が流出したことで人的被害が起き,マスコミも注目することになったことから,地震被災前の設備保全や地震直後にとった対応を整理するとともに,水槽損壊の原因を究明して九電としての説明責任を果たさなければならないという,極めて厳しい業務でした。しかし幸いにも,電力土木に携わってきた中で出会い,真摯に技術交流を積み重ねてきた学識経験者や専門技術者の方々からご指導,ご協力を頂けたことからこの難局を乗り越えることができたこと,すなわちそれまでの「人との出会い」の積み重ねで築き上げた財産でやり遂げたことを思い出したからでした。
 そこで,この熊本地震に伴う水力発電所の復旧対応での経験談を枕詞に,アフターコロナの今だからこそ大切にしたい「人との出会い」の話であれば,それなりにまとめられるかなと思い「『人との出会い』に支えられた電力土木40年」と題して回想することとしました。

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