会誌「電力土木」

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講座

放射性廃棄物処分の現状と技術開発 第 4 回 原子力発電所で発生する使用済イオン交換樹脂の処理技術の現状

 

山 本 武 志 (一財)電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 構造・耐震研究部門 研究推進マネージャー 上席研究員
古 川 静 江 (一財)電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 研究統括室 上席研究員

1. はじめに
 原子力発電所の軽水炉は,沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)の二つに分けられる。BWR では原子炉の熱で水を直接加熱して蒸気を発生し,タービンを回すことにより発電することが特徴となっている。(図1)。原子炉への給水に不純物が含まれていると,材質の腐食の原因となり,また水中の不純物が放射化され,系内の放射線濃度を上昇させることにつながる。一方,PWR では原子炉内の冷却水を高温・高圧の状態(1 次系)にして,蒸気発生器に送り,蒸気発生器で別系統(2 次系)の水と熱交換し,2 次系の水を沸騰させて蒸気を作り,タービンに送って発電するのが特徴である(図2)。BWR ではタービンを回す蒸気は原子炉で発生したが,PWR では蒸気は蒸気発生器で発生するため,タービンを回し発電する系統は放射性物質とは切り離されており,2 次系と呼ばれている。このため大量の復水を脱塩処理するために,イオン交換樹脂が充填された復水脱塩器が極めて重要な役割を果たしている(図3)。BWR の系統水は復水,炉水ともに中性の純水であり,これらの設備は中性水中の微量不純物を除去する性能が求められる2)。
 一方,PWR プラントでは復水浄化系を設けて蒸気発生器への不純物を防止するほか,蒸気発生器の器内水の一部を復水器に排出して不純物の過度な濃縮を防止している(図4)。
 PWR の系統水はアンモニアやエタノールアミンが添加されて pH9〜10に維持されているため,高純度の水質を求められる復水浄化系には海水リーク時の海水成分に加えてこれらのイオンを捕捉する性能が求められる。また,PWR の炉水中には反応度制御のためのホウ素と pH 調整のためのリチウムが添加されており,浄化装置にはこれらのイオンの濃度を変えずに放射性核種のみを除去する性能が求められる3)。

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