会誌「電力土木」

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講座

放射性廃棄物処分の現状と技術開発 第 3 回 地下水の長期安定性

 

中田 弘太郎 (一財)電力中央研究所 サステナブルシステム研究本部 地質・地下環境研究部門 上席研究員

1. はじめに
 原子力発電所の運転に伴い,発電に使用された燃料(使用済燃料)が発生する。使用済燃料から再利用できるウランやプルトニウムを取り出した後に残る,再利用できない放射能レベルの高い廃液を,ガラス原料と高温で融かし合わせ固化したものを「高レベル放射性廃棄物」とよぶ。高レベル放射性廃棄物については,地表から300メートル以深の岩盤中に,上記のガラス固化した廃棄物を埋設し,人間の生活圏から隔離する「地層処分」が最も有効な方法と考えられている(講座?参照)。
 放射性廃棄物の地層処分においては,ガラス固化した廃棄物から放射性核種が地下水に溶出し,地下水流動とともに人間の生活圏へと到達する可能性がある(これを「地下水シナリオ」という)。放射性核種は半減期に従って,時間の経過とともに減少していく。処分場付近の地下水流動が緩やかであれば,核種が漏出しても人間の生活圏に達するまでに,放射線的な毒性が十分に低下していることが期待できる。このため,処分場周辺の地下水流動はほとんど動いていないか緩やかであることが望ましく,地質(講座?参照)とともに地下水についても長期の安定性を評価する技術を確立することが期待されている。
 (一財)電力中央研究所(電中研)では,種々のイオンの同位体比や希ガスを用いた水文学的なアプローチによって,地下水の地下での滞留時間(地下水年代)を評価するための技術を開発してきた。地下水年代は「処分場周辺の地下水流動が緩やかであること」を示すことができるだけでなく,解析の検証・校正にも有用な情報となる。また,年代が古いことを示すことにより,処分場候補地点周辺で地下水・物質移動が緩やかであることが直感的に理解されやすいため,パブリックアクセプタンスの醸成にも資することができる。本講座では,電中研が開発してきた地下水年代評価技術について,事例と共に紹介する。

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