会誌「電力土木」

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講座

再生可能エネルギーの動向と課題 第 8 回 再生可能エネルギー主力電源化の電力系統課題

 

田 辺 隆 也 (一財)電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 ネットワーク技術部門 上席研究員

1. はじめに
 2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けた我が国のエネルギー政策では,脱炭素化への挑戦として再生可能エネルギー(再エネ)を主力電源と位置付け,より高度な 3E+S(Energy security, Economical efficiency, Environment+Safety)を目指しており,これに応える電力系統の実現が重要な課題となっている1)。
 電力系統は,電力の発生から消費までの一連のプロセスを司るものであり,発電設備,送変電設備,需要家等から構成される電力需給システムである。このシステムは140年以上に亘る電力需要の伸びとともに成長し,個々の設備の規模や種類,システム全体の空間的広がりや送配電や通信ネットワークの接続関係において,地球上で最も巨大かつ複雑なシステムの一つとなっている。さらに,近年の電力市場の規制緩和・自由化の進行により,送配電・発電・小売事業者など,多様な参加者が混在し,各々の思惑に従い互いに競争する環境へと移行してきている。
 電力の供給サイドから見た電力系統の基本的な目的は,停電を極力起こさずに高品質の(周波数や電圧が規定値に保たれた)電力を,できるだけ安価に提供することである。この目的の達成には,「将来の需要を賄うために,発電所や送電線等を,いつ・何処に・どれだけ準備していけばよいか」といった電力系統を計画する問題,「時々刻々と変化する需要に対応するためには,発電機の出力や送配電ネットワークの接続状態を変更し,電力の流れをどうコントロールすればよいか」といった電力系統を運用する問題を解決しなければならない。
 そこで本稿では,電力系統を取り巻く環境と将来の電力系統の状況を概観し,将来の再エネ主力電源化を支える,より高度な電力系統の実現に向けた電力系統課題の論点を概説する。また,電力潮流解析の観点から再エネ主力電源化の電力系統課題について概観する。

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