会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語(186) ディープラーニング/風力発電の認証制度/インダストリー4.0

 

ディープラーニング
 ディープラーニング(DL)とは,コンピューターが自動で音声や画像などの大量のデータを解析してデータの特徴を抽出する技術であり,人間や動物の脳神経回路をモデルにしたアルゴリズムを用い,パターン認識をするように設計された「ニューラルネットワーク(NN)」をさらに多層構造化した「ディープニューラルネットワーク(DNN)」を用いた機械学習である。通常,NN では中間層が 2〜3 層程度であるが,DNN では中間層が複数になっているため,ディープ(多層)ラーニングと呼ばれている。多層化することで,情報伝達と処理を増やすことができ,情報量をコンピューターが判断できるようになる。これにより多くのデータがあれば,従来の機械学習では難しかった複雑で扱いづらいデータの処理が可能になり,分析精度が向上した。

 ディープラーニングには,大きく分けて以下 3 つの代表的な手法がある。
・CNN(Convolution Neural Network)
 最もよく使用されているネットワーク構造で,主に画像認識や動体検知に使用される。
 画像の局所的な特徴を抽出して際立たせ,まとめてフィルタリングし分析する。これによって,画像の特徴を抽象化し,パターン学習を進めていく。動画や音声の認識ができないというデメリットがあるが,画像認識と識別の速さがあり,幅広い分野で応用されている。
・RNN(Recurrent Neural Network)
 音声データのような時系列データの学習や,自然言語処理分野(機械翻訳,文章生成,音声認識など)で使われるが,長い時系列データを上手く学習できない問題があるため,短時間のデータしか処理できない。
・LSTM 法(Long Short Term Memory)
 RNN のデメリットを解消した,長期の時系列データを学習することができるモデル。1997年に提唱された古いモデルだが,RNN の欠点を解消し,自然言語分野での処理に活用されている。このモデルによって動画をリアルタイムで解析して字幕を追加するなど,今までは人が行っていた分野が自動化された。

 ディープラーニングでは,これまで機械学習では処理が難しかった複雑なデータの解析などが可能である。そのため,人間が行っていた業務を一部機械に置き換えたり,業務の効率化や人件費を削減したりといったことが期待されている。


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風力発電の認証制度
 風力発電システムの認証制度は,風力発電が技術規格に定められた要件を満足していることを審査する「適合性評価」の制度であり,設計・型式認証,プロジェクト認証が行われている。
 設計・型式認証は,その型式の風車が設計条件,適用される基準,その他の技術的要求事項に従って,設計,文書化及び製造されていることを証明するものであり,プロジェクト認証は,型式認証された風車及び認証対象となる支持構造物及び基礎の設計が,外部条件及び設置サイトに関連する建築基準,電気基準などからの要求事項に適合しているかどうか評価するものである。
 海外では,デンマーク,ドイツ等,風車の認証取得が義務付けられている国もある。また,米国等では法的義務は特にないが,ファイナンスといった金融機関等からの要求により,実質的に認証取得が要求されている国もある。

参 考 文 献
・一般財団法人 日本海事協会 再生可能エネルギー部;風車及びウィンドファームの認証に関するガイドライン,2014年 5 月
・経済産業省 産業保安グループ 電力安全課;発電用風力設備の工事計画の適合性確認体制及び技術基準の見直しについて,令和 3 年10月13日
(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/007_06_00.pdf)


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インダストリー4.0
 インダストリー4.0とは,「第 4 次産業革命」とも呼ばれる製造業のデジタル化への取り組みを指し,ドイツが2011年に打ち出した産業政策である。製造業におけるコンピューターの活用に重点を置き,AI(人工知能)や IoT(モノのインターネット)のような IT 技術を工場等の製造現場に取り入れ,高い生産性を実現しつつ多様な市場ニーズに応えることを目的としている。水力・蒸気機関を活用した「第 1 次産業革命」,石油や電力を活用した「第 2 次産業革命」,IT 技術を活用し出した「第 3 次産業革命」に続く変化として位置づけられている。
 インダストリー4.0の中でも中心になるのはスマートファクトリー(考える工場)とされ,人間,機械,その他の企業資源が相互に接続し通信することで,生産プロセスをより効率化・高品質化することを目的としている。スマートファクトリー化された工場では,工場の稼働状況が見える化され,各製品の製造日時や納品場所のような情報に基づき,機械が自律的に判断することで製造プロセスを効率化できる可能性がある。また,大量生産の仕組みを維持しつつ,多品種少量生産や高付加価値製品の生産を行う「マスカスタマイーゼーション」の実現が期待されている。

参 考 文 献
・総務省 平成30年版情報通信白書

     
     
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