会誌「電力土木」

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でんたん

第46回 北海道の背骨より注ぐ雪渓水 〜命の水〜(北海道電力株式会社)

 

 当社は昭和30年代初頭から北海道日高地方を水力発電所の一大電源地帯とする「日高一貫開発計画」を立案し,約30年の歳月を経て建設した水力発電所群は,当社水力発電所の総出力の約35%を担っています。そのうち,新冠発電所は計画の目玉として建設され,当時道内最大となる堤高102.8 m の中央コア型ロックフィルダム,単機100 MW の大容量斜流型ポンプ水車など多くの新技術を採用し,昭和49年 8 月に 1 号機,同11月に 2 号機が運開しました。
 新冠発電所は,大容量ピーク水力電源として開発された当社初の揚水式発電所であります。新冠ダムは「北海道の背骨」と称される日高山脈の主峰,幌尻岳(標高2,052 m)に源を発する二級河川新冠川上流域に位置し,総貯水容量は145百万 m3 を誇ります。毎年春先には幌尻岳の雪渓水はかけがえのない貴重な“命の水”として貯水池に注がれ,北のあかりを灯し続けています。「日高一貫開発計画」は,日高山脈を水源とする諸河川を流域変更することにより自然エネルギーを最大限活用する計画としたものであり,大きな特徴の一つとして,新冠川に隣接する一級河川沙流川水系より 9 つの渓流取水設備を介して約25 km にもおよぶ日本有数の長大水路トンネルにより取水していることが挙げられます。この計画により建設された新冠発電所は,その大容量貯水池から水系全体の効率的運用に大きく寄与するとともに,電力安定供給のための自動周波数制御機能を有しており,北海道の需給運用上,重要な役割を担っております。
 新冠川の水源である幌尻岳は日本百名山に選定されており,道内外から多くの登山者が訪れますが,登山ルートには歩いて川や沢を横断する箇所も多いため「日本百名山の中でも最難関の山」とも言われております。
 新冠川流域の新冠町は古くから馬産地として知られ,日本の競馬界に多くの名馬を輩出しております。昭和60年代から平成初期にかけて巻き起こった競馬ブームを牽引したオグリキャップ(GI 4 勝,平成 2 年度代表馬)は競走馬引退後,新冠町で種牡馬として余生を過ごし,牧場には多くの観光客が訪れ町の経済活性に大きく寄与しました。新冠町から発電所へ向かう新冠川下流の平野部には多くの競走馬牧場があり,将来の名馬たちが自由に駆け回っている姿を見ることができます。


【アクセス】
●札幌市から新冠町まで車で約 2 時間
●新冠町から発電所まで車で約 1 時間半

  【写真】
1. 新冠ダム貯水池全景   3. 幌尻岳山頂からの眺望
2. 堤体背面および洪水吐  4. 名馬オグリキャップ像

     
     
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