会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語 (180) ECI 方式/デジタル画像相関法/CFRP

 

ECI 方式
 ECI 方式とは,Early Contractor Involvement 方式の略で,設計段階の技術協力実施期間中に施工の数量・仕様を確定した上で工事契約をする方式である。別途契約している設計業務に対する技術協力を通じて,当該工事の施工法や仕様等を明確にし,確定した仕様で技術協力を実施した者と施工に関する契約を締結する。設計段階から施工者が関与することで,発注時に詳細仕様の確定が困難な事業に対応する。
 事業プロセスの対象範囲に応じた契約方式は,設計とは分離して「工事の施工のみを発注する方式」が一般的であるが,その他の方法として ECI 方式以外に,「設計・施工一括発注方式」,「詳細設計付工事発注方式」,「維持管理付工事発注方式」などがある。各方式における事業段階と調達範囲の例を図―1に示す。
 ECI 方式の効果および適用に当たっての留意点は次のとおり。

【効果】
● 設計段階で,発注者と設計者に加えて施工者も参画することから,種々の代替案の検討が可能となる。
● 別途発注された設計業務の実施者(設計者)による設計に対して,施工性等の観点から施工者の提案が行われることから,施工段階における施工性等の面からの設計変更発生リスクの減少が期待できる。
● 施工者によって,設計段階から施工計画の検討を行うことができる。

【適用に当たっての留意点】
● 設計者と施工者の提案が相反する場合に,発注者が双方の責任の範囲を明確にしながら,提案の内容の調整と採否の最終的な判断を行う必要があることに留意する。
● 施工者の技術提案を取り入れながら設計者が設計を行うことから,施工者と設計者の責任分担等を明確化する必要があることに留意する。
● 我が国における適用事例が限られており,適用を通じて把握される知見等の蓄積が少ないことから,適用に当たっては有識者の助言等を得ながら進めることが望ましい。

 ECI 方式は,プロジェクトの設計段階より施工者の技術力を設計内容に反映させることでコスト縮減や工期短縮を図れることが大きなメリットとなる。一方,仕様とコストの基本条件が発注者,設計者および施工者で合意できていないと調整が難航する恐れがあるため,ECI 方式においては,発注者の技術力,判断力や調整力が重要となる。

参 考 文 献
・国土交通省:公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン,平成27年


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デジタル画像相関法
 デジタル画像相関法(DIC:Digital Image Correlation)とは,変形前後のデジタル画像の相関を利用して変位を算出する光学的全視野計測法の一つである。画像中にサブセットと呼ばれる局所的な計算領域を設定し,変形前後のデジタル画像において,最も相関が高い領域を探索する。この処理を画像全体で繰り返すことで,視野全体の変位を評価することができる。供試体の力学特性を調べる際は,供試体側面に変位計等が取り付けられることが一般的であるが,計測精度は高いものの局所的な力学的応答を計測することは難しいとされている。一方で,DIC では供試体全体での変位を評価できるため,不均質な材料や局所的な変形をする材料であっても,供試体全体で変位を把握することができる。また,変位からひずみに換算することで,供試体全体でひずみ分布を評価することもできる。DIC で必要なデータはデジタル画像のみであることから,ほぼ全ての材料に適用可能であるとされている。物体表面に特徴的な模様がない場合は,塗料を使って人工的にランダムな模様を加えることもある。

参 考 文 献
米山聡:画像相関法の基本原理と面内変位・ひずみ分布測定手順,日本複合材料学会誌,Vol. 40, No. 4, pp. 135-145, 2014.


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CFRP
 Carbon Fiber Reinforced Plastics(炭素繊維強化プラスチック)の略で,樹脂を炭素繊維で強化することで,樹脂単体よりも高い強度や剛性と軽さを併せ持つ。炭素繊維には,高剛性,高強度といった特徴以外に「導電性・耐熱性・低熱膨張率・自己潤滑性・X 線透過性」といった特徴も兼ね備えており,それらの特徴を生かすことで軽量化・大型化・小型化・省エネ化などが期待でき,様々な用途で幅広く使われている。
 もともとはゴルフシャフトやテニスラケット,釣竿といったスポーツ・レジャー用品から採用が進んだ CFRP だが,材料として優れた特徴を数多く保有していることから,現在では航空宇宙,自動車・バイク,産業機器,医療・介護・福祉,建築土木・インテリア,アトラクションなど,幅広い分野で活用されている。また,最近では軽量化が必要な大型・小型の UAV(無人航空機,ドローン)やエアモビリティ(空飛ぶクルマ,ホバーバイク)の実現など,先端技術分野にも積極的に採用が進んでいる。
 電力分野では,風力発電所において風車の大型化が進む中,風車翼の材料に高強度の CFRP が使用されつつある。CFRP を使用することでより大きな翼が製作可能となり,受風面積が増え発電効率を飛躍的に上げることができる。また,同じ大きさの風車でも,風車翼が軽量化できるとプロペラの駆動に必要な風速を下げられることから,小中型風車においても適用が始まっている。

参 考 文 献
・東レ・カーボンマジック株式会社 HP 〈https://www.carbonmagic.com/〉(参照2021/1/5)


     
     
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