会誌「電力土木」

講座

電力土木技術者のための電気技術　―第10回　電力流通設備の保守管理とアセットマネジメント―

髙橋　紹大

(一財)電力中央研究所　電力技術研究所　副研究参事

1.　はじめに
　本講座では第 9 回から第11回にて電力系統を構成する設備に着目した話題をお届けしている。第 9 回は主な設備の基本設計に関わる法・省令，規格等について，また自然現象への対応に関わる規格，規程等について概説した。今回は保守管理に関わる近年の動きとして，いわゆる「アセットマネジメント技術」の導入検討状況について紹介する。
　電気事業の公共性を背景に，供給信頼度の向上を志向してきた電力会社では定期的な点検や時間基準の設備更新(TBM; Time Based Maintenance)による予防保全(PM; Preventive Maintenance)が前提とされてきた。その状況下において各種診断技術による設備状態情報や，設備運用実績の統計分析等に基づく保守管理合理化(CBM; Condition Based Maintenance や RCM; Reliability Centered Maintenance の導入)，すなわち信頼度を維持しながらのコスト削減，が進められてきたことは言を俟たないが，高経年設備の増加，および近年の社会的なコスト低減要求や託送料金に対する説明責任の高まりを受け，アセットマネジメント技術に注目が集まっている。

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