会誌「電力土木」

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海外調査事業報告

欧州における揚水発電開発と放射性廃棄物地層処分に関する技術動向調査 ―第42回電力土木技術海外調査事業報告(その 1)―

 

大石 富彦

?環境総合テクノス 代表取締役社長

1. はじめに
 電力土木技術協会では,海外における先進技術の調査と国際交流を目的として,過去41回にわたり電力土木技術海外調査を実施してきた。
 本年度は,調査テーマを「欧州における揚水発電開発と放射性廃棄物地層処分に関する技術動向調査」として,現地調査や専門家との意見交換を行った。
 調査対象国は,スイスとドイツである。揚水発電所は再生可能エネルギーの普及が盛んな欧州では,調整力として重要なポジションを占めており,設備の保全だけでなく運用についても,その市場での価値と併せて聞き取ることとした。両国ともに自然環境が豊かであるとともに,主要な河川においてはダムがほぼ連続的に造られているため,新設発電所の建設ではなく既設発電所の改造,増設が開発,設備形成の中心となっている。設備としては,日本の可変速揚水タイプではなく,モーターと発電機は共用しているものもあるが,水車とポンプは別置きとするターナリータイプの発電所が多くみられた。発電所運用については各地点ともに苦労しており,安価な時間帯の深夜電力などを購入し揚水して,昼間の市場価値の高いときに発電してその差額で収入を得ているようである。
 もう一つの目的である放射性廃棄物地層処分については,有名なスイスの Grimsel 地下研究所を訪れた。スイスには放射性廃棄物地層処分に関する研究所が 2 箇所あり,このうち当該地点は花崗岩地域に建設されたものである。日本の研究者も共同研究の試験フィールドとして利用しており,当日は?大林組の手配で,日本語の流暢なイギリス人技術者に案内して頂き,多くの知見を得ることが出来た。
 なお,本報告は全 3 回にて行う予定とし,第 1 回は訪問先(スイス)の原子力事情と Grimsel 地下研究所について,第 2 回は Grimsel 揚水発電所,FMHL+揚水発電所,Emosson ダムについて,第 3 回は H●¨●ausern 揚水発電所,Gaildorf 風力・揚水発電所について報告する。

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