会誌「電力土木」

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でんたん

第35回 新岩松発電所と岩松ダム(北海道電力株式会社)

 

 新岩松発電所(出力16,000 kW,2016.1運開)は,北海道の屋根,大雪山連峰十勝岳を源流とする十勝川水系十勝川の上流部に位置し,岩松発電所(出力12,600 kW,1942.1運開)の水車・発電機の老朽化により再開発した発電所です。
 十勝川水系は,古くから上流における調整池計画や然別湖を利用した電力の総合計画地点として着目されており,岩松発電所はこの先駆けとして十勝川本流に最初に建設されました。
 岩松発電所の建設は,国の電力管理政策により設立された日本発送電株式会社によって1939年10月に着手,戦時体制下の厳しい環境で工事が進められました。
 岩松発電所の発電専用ダムとして建設された岩松ダムは,堤高37.2 m のコンクリート重力式ダムであり,竣工当初は北海道最大のダムでした。当時としては世界的水準の技術を駆使した工事であったとされ,例えば,ダムコンクリートの製造については,国内で初めて骨材の状態に応じたセメントなどの配合設計技術により一定のコンクリート強度を実現可能としたなどの記録があり,以降に建設されたコンクリート重力式ダムの先駆的な位置付けとして,ダム技術向上の一躍を担ったものと考えられます。
 岩松ダムは,使用開始以降,発電専用ダムとして長期に亘る適切な設備保全により現在も維持・活用されていることに加え,電気事業を通じて北海道東部地域の産業発展に大きく貢献していることが評価され,令和元年度土木学会選奨土木遺産に認定されました。
 新岩松発電所が立地する上川郡新得町は,北海道の中央部に位置し,東大雪の山々と日高山脈に抱かれた自然豊かな町です。
 新得町は,7 つの水力発電所が立地する「電源のまち」として PR されている一方で,岩松ダムが立地する十勝川上流域は,その多くを大雪山国立公園内が占めており,トムラウシ山などの登山道,トムラウシ温泉,四季を通した自然景観などの観光資源に恵まれており,岩松ダム下流では新岩松発電所からの放水を利用したラフティングやカヤック,カヌーなどのアクティビティが盛んに行われています。
 なお,新得町は2019年の NHK 連続テレビ小説「なつぞら」のロケ地にもなりました。
 新得町の気候は,寒暖の差から蕎麦作りに適しており,全国蕎麦生産の優良経営表彰に
おいて農林水産大臣賞を受賞するなど,「蕎麦の町」としても有名です。


【アクセス】JR 新得駅より車で30分

【写真】 1:新岩松発電所   2:岩松ダム
3:再開発全景概要  4:建設工事中の岩松ダム
5:新得町の蕎麦畑

     
     
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