会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語 (173) アイオノマー樹脂/インフラシステム輸出戦略/発電側基本料金

 

アイオノマー樹脂
 アイオノマー樹脂は,エチレン,アクリル酸,メタクリル酸等からなるポリマー構造の間に金属イオンが結合して架橋構造を形成している合成樹脂である。強靭で弾力性,柔軟性を合わせ持ち,耐久性(耐候性,耐酸性,耐塩性,耐摩耗性等)に優れている。また,加熱すると分子間架橋が緩んで流動性を示すため,熱可塑性樹脂と同じ手法で成形加工が可能である。さらに,耐寒性に優れ,低温域での物性が安定しているため,寒冷地域等への適用も可能である。
 アイオノマー樹脂の用途は数多くあり,強靭かつ高い耐摩耗性を活かした自動車部品やゴルフボール,加工し易く,成形性に優れる点を活かした包装材料や容器,低温域での高い衝撃強度を活かしたスキー靴等,幅広い分野で利用されてきた。
 近年では,空港や高速道路等の立入防止柵,塩害等の厳しい環境下である海岸地域等の護岸フェンスやかごマット等の高い耐久性が求められる構造物の部材等で,JIS G 3547に適合する亜鉛めっき鉄線,または,JIS G 3548に適合する亜鉛めっき鋼線に接着性樹脂を塗布し,アイオノマー樹脂を被覆した「アイオノマー樹脂被覆線(JIS G 3543合成樹脂被覆鉄線に適合)」が活用されている。
 アイオノマー樹脂の柔軟性と高い接着力を活かし,鉄線の心材とアイオノマー樹脂被覆を強力接着し一体化させ,密着性を高めることにより,空気・水分を完全に遮断して心材を保護することができる。このため,高い耐久性を有し,耐用年数が長く,被覆に傷が付いた場合も腐食の進行を防ぐことができる。

参 考 文 献
1) 土木学会第70回年次学術講演会(平成27年 9 月)「低密度ポリエチレン被覆鉄線の海洋環境下での適用性について」


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インフラシステム輸出戦略
 平成25年 3 月に経協インフラ戦略会議が立ち上がり,我が国企業によるインフラシステムの海外展開や,エネルギー鉱物資源の海外権益確保を支援するとともに,我が国の海外経済協力に関する重要事項を議論し,戦略的かつ効率的な実施を図ることとされた。経協インフラ戦略会議の決定事項として「インフラシステム輸出戦略」があり,令和元年度改訂版が令和元年 6 月に策定されている。
 電力分野については,経産省が主体となって策定しており,第41回経協インフラ戦略会議においては,日本企業による海外展開の状況の一つとして「電力会社は,国内の電力自由化を受けて海外展開を進める中でコンサル提供から出資へと経営参画を拡大」していると整理されている。また,日本企業の継続的な事業参画等に向けた支援として,?提案力の強化に向けた支援(政府が行う具体的な事業計画の検討や政策対話等を通じた上流からの案件形成等に電力会社を活用,他),?リスク軽減に向けた支援(民間資金動員促進のための政府機関等による資金投入や保険を通じたリスクマネーの供給等による金融面のリスク軽減,他)といったことが議論されている。

参 考 文 献
経協インフラ戦略会議(首相官邸 HP 内)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/index.html
インフラシステム輸出戦略(令和元年度改訂版)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai43/siryou2.pdf


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発電側基本料金
 今後,電力需要の伸び悩みが見込まれる一方で,再生可能エネルギーの系統連系ニーズの増加や送配電関連設備の高経年化対策等により,送配電関連費用の増大が想定されている。
 「発電側基本料金」は,送配電関連設備からの受益に応じた費用負担を実現するとともに,将来にわたって安定的に送配電関連設備を維持・運用し,発電側に送配電網のより効率的な利用を促すため,送配電関連費用の一部を系統利用者である発電側に,kW 単位の基本料金として,新たに負担を求める仕組みである。
 系統側に逆潮させている電源を課金対象とすることを基本とし,2023年度の導入を目指し,現在,詳細設計が進められている。

参 考 文 献
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会
1. 送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキング・グループ 中間とりまとめ
2. 第41回制度設計専門会合 資料 7 発電側基本料金の詳細について

     
     
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