会誌「電力土木」

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でんたん

第33回 小丸川河水統制事業と渡川発電所(宮崎県企業局)

 

 宮崎県企業局の歴史は,昭和13年 6 月22日に県営電気建設部が設置され,小丸川河水統制事業(小丸川総合開発事業)に着手したことに始まっています。
 この事業は,宮崎県中央を流れる小丸川において,下流より川原,石河内第二,石河内第一,渡川の各発電所を建設する計画を立て,建設工事に着手したものです。
 小丸川は,宮崎県中部の九州山地にその源を発し,美郷町南郷地区を経て日向市東郷町に入り,高鍋町において日向灘に注ぐ,長さ約74 km の宮崎県 5 大河川の一つです。
 建設は,下流の川原発電所及び浜口ダムから始め,次に石河内第二発電所及び戸崎ダムが着手され,それぞれ,昭和15年 4 月,昭和18年 3 月に運転を開始しています。しかし,戦中に,電力管理法に基づき,日本発送電?に強制出資させられています。
 石河内第一発電所及び松尾ダムは,昭和15年 4 月に石河内第二発電所と同時に着工していますが,戦火の状況により中止されていました。戦後,昭和21年11月に工事を再開しましたが,インフレーションにより資金の確保,資材・労力の調達に困難を極め,やっと昭和26年に完成しています。なお,竣工式後には,素人のど自慢大会が開催されるなど,建設工事と地元との一体感が感じられます。
 渡川発電所及び渡川ダムは,昭和25年に調査を始め,昭和27年 1 月に本体工事を着手しました。それ以来数次の計画変更や台風被害により工事は難航を極めましたが,工期を延長の上,昭和31年 4 月に完成しています。
 小丸川河水統制事業は,戦火を乗り越え,昭和13年から,実に18年の歳月を要して,完了しました。
 なお,戦後,川原発電所及び浜口ダムと石河内第二発電所及び戸崎ダムについては,日本発送電?の解散により,九州電力?の所有となりましたが,県においては,無償譲渡と同等の形で,国へ出資していることから,復元運動を行っています。九州電力?と交渉した結果,県に対し補償などを行うことで妥結し,復元要求しないことになりました。
 さて,石河内第一発電所は,平成12年度から14年度に大規模改良を行い,現在,渡川発電所について,FIT の既設導水路活用型を活用し,取り組んでいます。
 この発電所は,2 台の水車発電機があることから,交互に水車発電機を停止し工事を行います。工事は,本年度11月から 1 台目の発電機を停止し,令和 4 年度に完了予定です。
 発電所周辺の美郷町南郷地区には,百済王伝説がある神門神社があります。この神社は,718年に創建されたと伝えられ,古墳時代の銅鏡や多数の鉾など,貴重な宝物が発見されています。銅鏡の中には,奈良正倉院と同一の御物(ぎょぶつ)があることから,材料や寸法など奈良正倉院と同一にした西の正倉院が建てられています。
 美郷町に訪れの際は,是非お立ち寄りください。



【渡川発電所】
宮崎県日向市東郷町
許可出力12,000 kW 有効落差90.70 m

【アクセス】
JR 日豊本線 日向市駅より車で約80分

【写真】
? 竣工式後の素人のど自慢大会
? 石河内第一発電所の発電機運搬状況(建設時)
? 渡川発電所の全景
? 渡川発電所の鉄管敷設(建設時)
? 渡川ダムの堰堤工事(建設時)
? 渡川発電所の Y 分岐管の敷設(建設時)
? 西の正倉院

     
     
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