会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語 (171) Utility3.0/バーチャルパワープラント(VPP)/橋梁常設足場

 

Utility3.0
 電気,ガス,水道,運輸などの公益事業の担い手を Utility と呼ぶが,下記参考文献では,総括原価,地域独占といった制度的裏付けを得て経済成長を支えてきた時代を Utility 1.0 の時代,電力システム改革により効率性を求められるようになった時代を Utility2.0 の時代と呼んでいる。さらに Utility2.0 の時代は通過点に過ぎず,今後は,社会インフラを総合的に担う時代を「Utility3.0」の時代と定義し,より良いエネルギーの未来のために変革が求められると予測している。なかでも,今後のエネルギー事業の在り方に大きな変革を促す要因を「5 つの D」すなわち,自由化(Deregulation),人口減少(Depopulation),脱炭素化(Decarbonization),分散化(Decentralization),デジタル化(Digitalization)と整理している。エネルギーインフラを支える技術者は,これらの潮流を捉え,社会の在り方を考えながら,業務を行うことを期待されている。

参 考 文 献
エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ,竹内純子 編著,伊藤剛,岡本浩,戸田直樹 著 日本経済新聞出版社


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バーチャルパワープラント(VPP)
 家庭等が所有する太陽光発電などによる分散型エネルギーと,電力系統に直接接続されている従来の大規模発電設備,および,蓄電設備といったエネルギーリソースを束ね,IoT を活用した制御によりこれらを遠隔・統合制御することで,発電所のような機能を提供する仕組みが VPP であり,VPP により負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収などが期待されている1)。VPP においてエネルギーリソースを制御する役割を有する事業者をアグリゲーションコーディネーターと呼ぶ。海外では主にドイツやイギリスで VPP が事業として成立しつつあり2),我が国においても,令和 3 年度の事業化を目途に,資源エネルギー庁の施策として基盤整備を含めた実証事業が進められている。

1) 経済産業省資源エネルギー庁,https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html (2019/07/11確認)
2) 三菱縫合研究所,諸外国におけるバーチャルパワープラントの実態調査,https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000583.pdf, 2017.


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橋梁常設足場
 橋梁常設足場とは,橋梁の上部工の桁周りに常設される密閉型の足場のことをいう。
 開発の背景は,2014年 7 月に施行された道路法施行規則において,橋長 2 m 以上の橋梁に関し 5 年に一度の近接目視点検が義務化されたが,鉄道上や幹線道路,海上などにある多くの橋梁は近接目視点検を簡単には行えない状況にあったこと。
 橋梁常設足場は,高耐食外装材で構成されており,橋梁の下面,側面を覆うことで,防食の機能を果たすとともに,常に安全かつ容易に全面の近接目視点検を行えるものである。
【機能】
 ? 足場・防護工
 橋梁主構造の近接目視点検をいつでも安全,確実に実施でき,修繕作業も容易である。また,ボルトや剥落コンクリートなどの落下防止対策にもなり,パネルの耐火性能から路下火災から橋桁を護る防火機能もある。
 ? 防食
 高耐食のパネルで鋼桁,床版下面を覆い,風雨,飛来塩分,紫外線等の鋼材腐食・塗膜劣化因子を遮断し,かつパネルの断熱機能で結露を抑制することで内部空間の腐食環境を緩和して腐食を抑制することができる。
 その他,付加機能として,橋体からの騒音拡散を防ぐ遮音機能がある。
【適用事例】
・国土交通省羽田空港 D 滑走路工事の桟橋,連絡橋
・東日本高速道路東京外環自動車道東北本線跨線橋(既設橋への設置) 等

参 考 文 献
・建設機械施工 Vol.68 No.10 October 2016
 http://www.nssmc.com/product/roukyu/product/nsengi/pdf/cover_plate18_2.pdf

     
     
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