会誌「電力土木」

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でんたん

第30回 上麻生発電所(中部電力株式会社)

 

 上麻生発電所は,岐阜県加茂郡七宗町に位置し,飛騨川本川から取水する上麻生取水えん堤と導水路途中の渓流に細尾谷ダム調整池を設け,大正15年11月に最大出力24,300 kW,最大使用水量55.56 m3/s で運転を開始し濃尾地方の電力供給に貢献しました。
 上麻生取水えん堤は,日本現存最古のローリングゲートを 2 門有しているのが特徴です。ローリングゲートは,円筒状のゲートであり,ゲート下部に円弧形の翼板を設け固定堰に密着させ水密を確保しています。ゲートの開閉は,ゲート両端のギアをピアに取付けられたラックに噛み合わせワイヤロープにて,その名のとおり回転させ行います。このローリングゲートは,昭和16年 3 月に上流発電所の開発に際し上流発電所放水口と上麻生取水えん堤の間に遊休落差があることから,ローリングゲート上部に直立翼を設け約 1 m の嵩上げを行いました。これにより,取水量を増やし上麻生発電所の最大出力を増加させています。
 昨年,上麻生取水えん堤は,「平成30年度土木学会選奨土木遺産」に認定され,土木学会中部支部80周年記念式典において認定書授与式が執り行われました。
 選奨土木遺産とは,歴史的価値の高い土木遺産に対して,顕彰を通じて土木構造物の保存に資することを目的として平成12年度に創設された賞揚制度です。
 上麻生発電所周辺では,七宗町から白川町に至る約12 km において飛水峡と呼ばれる雄大な自然が創り出した渓谷を見ることができます。険しく迫った峡谷を流れる水,神秘的な大彫刻の趣きをみせる両岸の奇岩怪岩など,変化に富んだ景観を楽しむことができます。七宗橋・報告橋・上麻生橋などの眺望ポイントがあり,初夏の飛水峡の岩肌には薄紅色の花を咲かせる岩ツツジも見所となっています。
 また,国の天然記念物にも指定されている甌(おう)穴(けつ)は,激流が悠久の時をかけて固い岩を壷状に削り取ってできたもので,その数は800個以上あり,水の力,自然の威力を感じることができます。是非一度観光にお越しください。


【上麻生発電所】
最大出力  :28,500 kW
最大使用水量:62.5 m3/s
最大有効落差:51.3 m
【上麻生取水えん堤】
重力式コンクリートダム
堤 高:13.18 m
ローリングゲート:2 門
  幅28.73 m・高5.91 m
【細尾谷ダム】
重力式コンクリートダム
堤 高:22.36 m


【アクセス】
JR 美濃太田駅より上麻生取水えん堤まで車で約30分


【写真】
1. 上麻生取水えん堤全景 2. 細尾谷ダム全景 
3. 上麻生発電所 4. 土木学会選奨土木遺産銘板 
5. 土木遺産認定書 
6. ローリングゲート嵩上げ工事(昭和16年撮影) 7. 飛水峡


→次回の「でんたん」は北陸地方を探訪します。お楽しみに!

     
     
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