会誌「電力土木」

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でんたん

第13回 雨竜発電所(北海道電力株式会社)

 


 雨竜発電所は,北海道の中央部に位置し,石狩川水系雨竜川の支流に設けられた貯水池から導水路により天塩川水系天塩川へ放流する,出力51,000 kW のダム水路式発電所です。
 雨竜川上流域は,以前は北海道大学の演習林でしたが,大正末年より計画が立案され,ダム建設地点に最適な河川狭さく部があること,流域変更によって大きな有効落差が得られることなど,天与の地形であることが分かっていました。そのため,昭和初期の北海道における電力供給の中核として,第二次世界大戦の真っ只中,資材不足に悩まされながらも,当時としては国内最大級の大規模建設工事が進められ,先人の方々のご活躍のもと,わが国初の地下式発電所として昭和18年に完成しました。
 雨竜発電所には,雨竜第 1 ダム(朱鞠内湖)と雨竜第 2 ダム(宇津内湖)の 2 つのダム湖があり,延長約 1 km の連絡水路で結ばれています。両貯水池を合わせた有効貯水容量は1.83億 m3 で,建設当時は「東洋一の貯水量」と呼ばれていました。朱鞠内湖は湛水面積2,373 ha の広さを誇り,人造湖としては日本最大です。また,湖に浮かぶ大小13の島々を始め,自然景観が非常に美しく,昭和49年には道立自然公園に指定されています。ワカサギやイトウが生息している湖としても有名で,釣り愛好家が数多く訪れるほか,湖水祭りなどの地元行事も行われ,人気を集める観光名所として親しまれています。
 当地は北海道でも有数の寒冷・豪雪地域であり,近隣の幌加内町母子里(もしり)では,1978年に最低気温−41.2℃を記録しました。また,そばの産地としても有名で,作付面積日本一のそば畑は,夏には白い花が咲き誇り,毎年 8 月末頃に新そば祭りが開催されています。
 春夏秋冬,四季折々の顔を持つ大自然に囲まれた当地へ,是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

雨竜発電所
北海道上川郡風連町・幌加内町
認可出力 51,000 kW
最大使用水量 44.20 m3/s
有効落差 139.91 m

【アクセス】JR 名寄駅より車で約30分

(写真) 1 建設中の雨竜第 1 ダム  2 建設中の雨竜発電所
3 現在の朱鞠内湖     4 現在の雨竜第 1 ダム
5 ワカサギ釣り風景    6 幻の魚「イトウ」

→次回の「でんたん」は九州地方を探訪します。お楽しみに!

     
     
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