会誌「電力土木」

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でんたん

第4回 十和田発電所と十和田湖

 

十和田発電所(昭和18年運開)は,11個所の渓流取水と十和田湖を水源とした,出力31,100 kW の貯水池式発電所です。十和田湖の水利用計画については,昭和12年に内務省・農林省・逓信省・青森県・秋田県および東北振興電力(株)(当社の前身)間で制定された「奥入瀬川河川統制計画」により,灌漑,発電,景観保護のために十和田湖水を有効利用することが定められ,新田開発を国が,水力発電を電気事業者が分担することとなりました。
 十和田湖は青森・秋田の県境,標高約400 m に位置するカルデラ湖(総貯水量48億 m3)で,大きな流入河川が無いことが特徴です。流出は発電・灌漑用の青ぶな取水口と奥入瀬渓流への観光放流用の子ノ口制水門の 2 個所があり,青ぶなからの取水量は 1 億 6 千万 m3,子ノ口からの観光放流は 5 千万 m3 で年間 2 億 1 千万 m3 が必要です。一方,降雨による流入量は 1 億 9 千万 m3 しかないため,湖域外で標高400 m 以上に位置する11渓流からの取水を十和田湖に 2 千万 m3 逆送水することで水収支を維持しています。
 現在,青ぶなで取水した流水は十和田発電所のほか,下流に位置する立石発電所(出力10,500 kW),法量発電所(出力6,800 kW)を経て,三本木原穀倉地帯(約 8 千 ha)へ農業用水として供給しています。
 子ノ口からは,観光シーズン(4 〜11月)には5.20 m3/s(流域面積100 km2 当り4.13 m3/s)を放流し,通称“魚止めの滝”と称される「銚子大滝」を始め「阿修羅の流れ」等の雄大な景観を維持し,観光客の目を楽しませています。
 また,平成26年に行われた第 9 回 B-1 グランプリでは,「十和田バラ焼きゼミナール」がゴールドグランプリに輝き,今年10月に十和田市中央公園を主会場に第10回大会が開催されることが決定しました。全国各地のご当地グルメでお腹を満たした後は,明治の文人,大町桂月も愛した十和田湖と奥入瀬渓流を散策してみてはいかがでしょうか。
住まば日の本 遊ばば十和田 歩きや奥入瀬 三里半(桂月)


十和田発電所
青森県十和田市
(1〜3 号機)
認可出力 31,100 kW
最大使用水量 20.00 m3/s
有効落差 181.30 m


【アクセス】東北新幹線 七戸十和田駅から車で約40分
(写真) 1 十和田発電所本館・水圧鉄管 2 建設中の発電所本館,青ぶな取水口 3 十和田湖 4 逆送水の概念図 5 銚子大滝 6 奥入瀬渓流(阿修羅の流れ) 7 十和田バラ焼き

→次回の「でんたん」は四国を探訪します。お楽しみに!

     
     
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