海底地すべり

海底地すべりとは,海底斜面に存在する未固結堆積物が,崩壊などによって引き起こす比較的急速な物質移動,すなわち堆積物のある程度の大きさの塊が重力の作用により斜面を滑り落ちる現象をいう。
 海底地すべりについては,広大な海底に対して,詳細に調査されている海域はまだ小さく,また海底地すべりの大部分は水深200〜300 m 以深の大陸斜面やその基部の緩やかな斜面の海底で発生するために,その運動様式に関する長期的な観察・観測例がほとんど無い。しかしながら,近年の海底調査研究の進展に伴って,その詳細も次第に明らかになってきている。
 海底地すべりを発生させる原因としては,1)地震,2)構造運動,3)暴風時の波浪,4)潮位運動,5)津波,6)海水準変動,7)堆積物の供給過大,8)ガスハイドレートの分解,9)火山活動,10)海底地盤内浸透流などが挙げられる。
 海底地すべりの特徴は,その規模が陸上に比べ大きいことである。陸上での地すべりでは地すべり土塊の体積は大きいものでも数十 km3 程度であるのに対して,海底地すべりでは数千〜数万 km3 に及ぶものもある。また,地すべりの厚さ(D)と長さ(L)の比(D/L)(「縦断アスペクト比」という。)は,陸上での地すべりでは 1/3 から 1/20であるのに対して,海底地すべりでは 1/75から 1/1800と著しく小さい値を持っている。また,海底地すべりの起こる斜面は必ずしも急斜面であるとは限らない。このような崩壊規模の大きさ,移動距離の大きさ,斜面傾斜角の小ささは,水に飽和した海底という環境にある堆積物中の間隙水圧の上昇が関係しているとされている。
 主な海底地すべりとしては,ノルウェイ沖におけるストレッガー海底地すべり(約8000年前),アリューシャン列島東端のウニマク島南における海底地すべり(1946年アリューシャン地震),ハワイ島周辺における海底地すべりなどがある。
 被害としては,海底地すべりに伴い発生した津波が沿岸部を襲った事例や海底ケーブルを切断したなどの事例も報告されている。

参 考 文 献

地すべり学会誌((公社)日本地すべり学会)
   

地すべり((公社)日本地すべり学会)
   



閉じる