スコーピング

 環境アセスメントとは,言うなれば環境によりよい事業計画を見つけ出していくためのツールであり,事業の環境への影響を調査・予測・評価するといった技術的な側面と,事業者側からのみの検討に終わらせず,広く情報を公開して意見を求めるといった側面を持っている。
 そこで環境影響評価法立案の際に注目されたのが諸外国で広く行なわれているスコーピングという手続きである。スコーピングとは,アセスの調査・予測・評価の作業を事業者が行う前に,アセスの項目や手法について予め情報を公開して,住民や専門家あるいは行政の意見を求めるという仕組みである。
 すなわち,スコーピングは,調査等に着手する前の段階で住民や専門家等の意見を反映することにより,論点を絞り込み,メリハリの利いた効率的な予測評価の実施,調査等の作業の手戻りの防止,関係者の理解の促進および事業計画の早期段階での環境配慮等に資するといった趣旨・目的を有している。
 スコーピングは,まず事業者による環境影響評価方法書(以下「方法書」と言う。)の公表(法律上は「公告・縦覧」)から始まる。方法書とは,対象事業の目的・内容,実施区域および環境影響評価の項目と手法等を記載したものである。
 方法書が公表されると,これについて「環境保全の見地からの意見を有する者」(以下「意見者」と言う。)が意見を述べることとなるが,ここでいう意見者には一切の限定がなく,個人,団体の別,住所,国籍等が問われることはない。
 こうした住民,専門家の意見の他,市長村長と都道府県知事の意見も述べられるが,特に都道府県知事は住民や専門家の意見および市町村長の意見の全てを把握した上で意見を述べることとされており,この意見は極めて重要であり,事業者にとって重く受け取られるものとなる。
 事業者は,これらの手続きを経て,アセスの項目および方法等を選定することとなる。

参 考 文 献

1)財団法人自然環境研究センター.環境影響アセスメント・自然環境保全をめぐる最新の動向
   



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