「酢酸ウラニル蛍光法」は,コンクリートの ASR(アルカリシリカ反応)判定に用いられる手法で,アメリカ連邦道路局により提案されたものである。酢酸ウラニル溶液をコンクリートコア破断面に塗布し,暗室で紫外線を照射すると,ASR ゲル(アルカリシリカゲル)が黄緑色に発光することにより,ASR か否かを判定することができる。酢酸ウラニル溶液中のウラニルイオンは,ASR ゲル中のアルカリイオンと置換する性質をもっており,そのウラニルイオンが「ルミネッセンス」により発光する。「ルミネッセンス」とは,物質が外部からのエネルギーを受けて励起され,その後受け取ったエネルギーを光(可視光線)として放出する現象である。
ASR の判定には,岩石学的試験(偏光顕微鏡観察,粉末 X 線回折分析),薄片によるコンクリート組織の観察,走査型電子顕微鏡による ASR ゲルの検出など1),専門的知識や技能を必要とすることが多いが,本手法は簡便に ASR を判定することができる。ただし,試験に使用する酢酸ウラニル溶液は,高濃度のウランを含む放射性溶液であり,一般的には溶液の扱いや廃棄物の扱いが困難であり,国内では実施している機関は少ない。(「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」においては,ウランの量 300 g 以上使用する場合,使用の許可を受ける必要がある。また,それ以内であっても,国内規制物質の使用の許可を受ける必要がある。)
参 考 文 献
1) コンクリート診断技術[基礎編],(社)日本コンクリート工学協会