残余のリスク

  「残余のリスク」とは,平成18年9月19日に原子力安全委員会において決定された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の中で,「策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより,施設に重大な損傷事象が発生すること,施設から大量の放射性物質が放散される事象が発生すること,あるいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射線被ばくによる災害を及ぼすことのリスク」と記されている。
  旧指針においては,基準地震動に関し,S1 および S2 の2種類を策定することとされていたのに対し,改訂された耐震設計審査指針では,2つの基準地震動の策定方針を統合し,基準地震動 SS として,検討用地震の選定,地震動評価について高度化を図っている。基準地震動 SS は,敷地ごとに震源を特定する地震動と震源を特定せず策定する地震動に大別されており,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動としては,後期更新世以降の活動が否定できない敷地周辺の活断層をもとに,その性質,過去および現在の地震発生状況等を考慮し,さらに地震発生様式等による地震の分類を行ったうえで敷地に大きな影響を与えると予想される地震を,複数選定することとされている。
  「残余のリスク」とは,このようにして策定された地震動に対し,地震学的見地からそれを上回る強さの地震動が生起する可能性を否定できないとの認識に立ったものである。改訂された耐震審査指針では,この「残余のリスク」の存在を十分認識しつつ,それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである,とされている。
  「残余のリスク」の概念の導入意義としては,それを評価するための地震 PSA 技術の現状をもとにリスク指標を評価し,それを担保することで安全性に関する透明性を保証することなどといわれている。
  なお,改訂指針案では,「残余のリスク」の定量的評価の結果を設置許可申請の段階で提示するとの規定にはなっていないが,原子力安全委員会としては,安全審査とは別に,行政庁において,「残余のリスク」に関する定量的評価を実施することを原子炉設置者に求め,その確認をすることが重要である,としている。

参 考 文 献

1) 第14回原子力安全シンポジウム,「改訂された耐震設計審査指針と今後の取組」,原子力安全委員会,平成19年3月4日(日)
   



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