低周波空気振動

 低周波空気振動とは,工場や交通機関,ダム放流などから発生して,人の耳には感知し難い低い周波数(0.1Hz〜100Hz)の空気振動のことで,聞こえる音(20Hz〜100Hz,低周波音)と聞こえない音(0.1Hz〜20Hz,超低周波音)の2つからなっている。

  低周波空気振動による苦情は,物的,心理的および生理的苦情に大別される。物的苦情は,音を感じないのに戸や窓がガタガタする,置物が移動するといったもの,心理的苦情は,低周波空気振動が知覚されてよく眠れない,気分がいらいらする,胸や腹を圧迫されるような感じがするといったもの,生理的苦情は,頭痛・耳鳴りがする,吐き気がするといったものである。

  ダム放流に伴う低周波空気振動は,ダムのうち砂防用の固定ダム,ゲートのような構造体のダム,あるいは貯水ダムなどから薄い水流が落下する場合に超低周波音が発生するものである。その発生原因と防止対策を以下に示す。

発生原因 : 水流と水流の背面に空洞があり,この空洞が1つの空気柱を形成している(図−1参照)。この空気柱は無数の固有振動を持っているので,何らかの原因で超低周波成分の固有振動が加振されると空気柱が共振し,端面などから超低周波音が外部に放射される。加振源としては,水流の落下音,水膜の固有振動がある。超低周波音の発生は空気柱の共振現象であるので,超低周波音を発生する空気柱の寸法は限られた大きさのものになる。なお,一般的にダムから超低周波音が発生するということではない。

防止対策 : 防止対策としては,水膜振動などの加振源となる振動をなくすこと,および空気柱の固有振動数を変えることが必要である。そのために,水膜を図−1に示すように小さくカットしたりすることなどが行われる。


【図−1】 ダムと水流分割の一例

参 考 文 献

1)環境省.低周波音の測定方法に関するマニュアル.2000.10.
   

2)中野有朋.騒音・振動技術.万葉舎.1990.11.
   

3)国立環境研究所環境情報案内・交流サイト(EICネット)
   http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1820



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