沈堕発電所は,大野川と緒方川の合流点より下流にある高さ約19 m,幅約110 m の阿蘇溶結凝灰岩により形成された「沈堕の滝」の上流に取水堰を持ち,2,912 m のトンネルにより水を導き最大8,300 kw を発電しています。
当発電所は,明治42年より運用開始しており,当時は500 kW 発電機 3 機により大分市,大野郡(現豊後大野市)及び大分〜別府間の路面電車へ電力を供給していました。
その後,需要に対応するため大正12年に新沈堕発電所建設を開始し,同年に完成。出力を7,200 kW へ更新(昭和55年に現在の8,300 kW へ増加)しました。残された石造りの旧発電所跡は,観光地として多くの人が訪れています。
沈堕の滝は,古くから西日本の雄瀑として知られ,室町時代に水墨画家である雪舟が訪れ,「沈堕瀑図」を描いたことで有名な滝で,平成19年 7 月に国の登録記念物として登録されています。しかし,柱状及び水平節理が発達して出来た沈堕の滝は,大規模出水を迎える度に滝壁面岩盤の崩落を繰り返し,取水堰直下まで滝が後退しました。このため,平成10年に取水堰の安全確保のため,岩盤の補強工事を実施しました。その際に,自然石や擬石を施して沈堕の滝の特徴であった11条の落水を復元し,地域に親しまれる取水堰周辺の環境づくりに努め,設備保全と地域共生の両立を目指しました。
沈堕発電所が所在する豊後大野市は,他にも多くの歴史が残る地域です。大野川の支流奥岳川に跨る石橋としてはアーチの直径が日本 1 位の「轟橋」,同 2 位の「出合橋」があります。この 2 本の橋は並んで架かっており,中でも出合橋は大正13年に地区の重要な交通路として,地区の住民の手によって架けられたものです。対する轟橋は,国有林から木材を搬出するトロッコ列車のために昭和 9 年に架けられました。
また,大分県豊後大野市は,おおいた豊後大野ジオパークに登録されており,豊かな自然にも囲まれています。沈堕の滝の上流には,日本の滝100選に選ばれている,高さ20 m,幅120 m の円弧状に流れる「原尻の滝」があります。原尻の滝のすぐ上を道路が通っており足元を流れた水が落ちていく様子を間近で見ることが出来ます。滝つぼへ降りれば,滝の上を歩く人や自動車が通行する姿が見え,不思議な光景が広がります。原尻の滝には道の駅が隣接しており,多くの地域の特産品などが取り揃えられております。また,春になると道の駅周辺に100種類約50万本ものチューリップが咲き誇り,その光景は壮観です。
見所が豊富な大分県豊後大野市にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
【沈堕発電所】
大分県豊後大野市大野町小倉木
最大許認可出力 8,300 kW
最大使用水量 25.04 m3/s
最大有効落差 38.791 m
【沈堕取水堰(沈堕の滝)】
大分県豊後大野市大野町矢田
大野川水系大野川
重力式コンクリート堰
堤高 5.5 m
頂長 114.9 m
【アクセス】
車 :中九州道大野 IC より約10分
JR:大分駅より豊肥本線豊後清川駅下車 徒歩約50分
【写真】 1:沈堕発電所 2:沈堕取水堰(沈堕の滝)
3:旧沈堕発電所跡 4:原尻の滝
5:道の駅原尻 6:轟橋・出合橋