照査用下限加速度応答スペクトル

○概要
 照査用下限加速度応答スペクトルは,地震の震源となる活断層が地表面に現れていない場合を想定して,ダムの耐震性能照査にあたって,最低限考慮すべき水平地震動を加速度応答スペクトルとして設定したものである。

○照査用下限加速度応答スペクトルの設定について
 ダムの耐震性能の照査には想定地震によってダム地点において発生するものと推定される地震動を用いる事を基本とし,以下に示す地震動の影響についても考慮した上で,照査用の地震動を設定することが定められている。
 1) ダム地点またはその近傍で過去に実際に観測された最大の地震動
 2) 照査用下限加速度応答スペクトルを有する地震動

 活断層が知られていない場所の直下で発生する可能性があるものとして,考慮すべき地震の規模については,土木学会が取りまとめた『土木構造物の耐震設計ガイドライン』に設定の根拠が示されている。同ガイドラインでは,M6.5以下の小規模地震では地表地震断層が生じる可能性は低いこと,対象地点およびその周辺に活断層が知られていない場合など,レベル 2 対象地震が明確に選定できない場合には,M6.5程度の直下型地震が発生する可能性に配慮することが示されている。
 照査用下限加速度応答スペクトルの設定については,既往の調査研究により経験的に得られているマグニチュードと断層面の深さや傾きなどのパラメータを種々変化させた場合に,当該断層において発生する M6.5の地震により地表付近のダム基礎岩盤相当の地盤で発生する水平地震動の加速度応答スペクトルを経験的方法および半経験的方法(統計的グリーン関数法)を用いて試算が行われている。経験的方法による地震動の推定にあたっては,推定値に対するばらつきの影響に対する安全側の配慮として,平均値と標準偏差の和に対応する推定式が適用されている。
 「照査用下限加速度応答スペクトル」は,以上のような検討によって推定されたモデル断層面の中心の直上から一定距離の地表面範囲において発生する水平地震動を統計的にほぼカバーするレベルのものとして求められた地震動の加速度応答スペクトルをもとに,これにダムサイトにおいて得られている既往の強震記録の加速度応答スペクトルの形状特性や,ダムの周波数応答特性(固有周期帯)などの諸要因を総合的に考慮した上で設定したものである。
 同図は,指針(案)・同解説が示す加速度応答スペクトルである。なお,国土技術政策総合研究所の HP では,加速度応答スペクトルの変更案(H20 式)が示されている。


参 考 文 献

1) 国土交通省河川局:大規模地震に対するダムの耐震性能照査指針(案)・同解説(平成17年 3 月)
   

2) 国土技術政策総合研究所:大規模地震に対するダムの耐震性能照査に関する資料(平成17年 3 月)
   

3) 土木学会地震工学委員会耐震基準小委員会:土木構造物の耐震設計ガイドライン(平成14年 9 月)
   



閉じる