エネルギーセキュリティ

 エネルギーセキュリティとは,政治,経済,社会情勢の変化に過度に左右されずに,国民生活に支障を与えない量を適正な価格で安定的に供給できるように,エネルギーを確保することである。わが国では,1970年代の2度にわたる石油危機による教訓から,エネルギー源を安定して確保する必要性に迫られ,政情の不安定な地域に賦存する石油依存度を低減しながら,原子力,天然ガス,石炭等に供給源を多様化することによってエネルギーセキュリティを強化してきた。
  国際的には,第一次石油ショック後に,西側諸国が OPEC(Organization of Petroleum Exporting Countries)に対抗するために,1974年に IEA(International Energy Agency)が設立された。IEA 加盟国は,短期的な取り組みとして石油備蓄を行うとともに,石油への過度な依存を低下させるために,国産資源の開発,燃料源の多様化やエネルギー効率の向上などに取り組んできた。一方で近年は,国際エネルギー市場が確立されてきたことにより,各国共に市場でのエネルギー調達が主流となってきている。
  日本では,石油依存度は第一次石油危機当時の77%から50%程度まで低下した。しかしながら,日本の石油依存度は欧米諸国(米国40%,英国36%,ドイツ41%,フランス36%)と比べてまだ高いレベルにある。また,エネルギーの輸入依存度も高く,特に石油の中東地域への依存度が80%を超える状況は欧米各国と比べて極めて高い。一方で,欧州では天然ガスの需要が増加しているものの,供給国がロシアとアルジェリアに限られるため,日本の中東依存と同様な状況にある。
  最近では,中国・インド等の新興国の経済発展による資源エネルギーの需要が世界的に増大しており,またロシアなどの資源ナショナリズムによる資源の国家管理強化が顕著になってきた。これらに加えて,投機的取引に基づく燃料価格の高騰も現実となっており,市場からのエネルギー調達にも様々なリスクが存在する。
  日本のエネルギーセキュリティは,原子力政策(国産エネルギー調達)や環境政策(再生可能エネルギーの促進や化石燃料消費削減)にも深く関係している。資源希少国である日本では,これらの政策とも調整をとりながら,戦略的にエネルギーを確保することが重要となっている。

参 考 文 献

1) 矢島正之;服部 徹;筒井美樹.エネルギー・セキュリティ確保のための政策動向調査.電力中央研究所報告Y99012,2000.
   

2) 経済産業省資源総合エネルギー調査会総合部会.エネルギーセキュリティワーキンググループ報告書.2001.
   



閉じる