地質年代測定法

 地質年代測定法は,測定対象とする時代に応じて様々な方法があるが,ここでは,主に後期更新世の地質年代測定法について概略を説明する。
 地質年代測定法は,ある地点の地層を含む岩石の生成時期や地史学的事件の相対的な前後関係に基づき層序を決定し,その情報について離れた地域の層序記録と関連付けを行い地質時代を区分する方法(以後,層序の対比・編年による方法という)と,放射年代,樹木の年輪,歴史文書などにより数値年代を求める方法(以後,数値年代測定法という)の大きく2つに大分され,実際の年代測定ではこれらが併用される。

【層序の対比・編年による方法】
 対比・編年に用いる層序には,表−1に示す古地磁気層序,海洋酸素同位体層序,化石層序および火山灰層序等がある。層序記録に明確に残る指標のうち,酸素同位体の急変境界,特定生物種の出現と絶滅層準および指標テフラ等は,広範囲の地層に同時面を与えることから,広域的な対比,編年の重要な基準となっている。
 特に,火山国である日本においては,広域テフラにおける火山灰層序は特徴的な手法であり,それらの層位関係の詳細な検討や鉱物組成等の細かい記載,火山ガラスの屈折率測定,成分分析等がなされており,地層対比の上で非常に有効な鍵層となっている。

【数値年代測定法】
 数値年代測定法には,その原理から(1)放射年代測定法(放射性元素の崩壊量や痕跡等による年代測定法),(2)樹木年輪や年層など季節的に変化する現象による年代測定法,(3)歴史文書による年代決定法,(4)地球軌道要素の変化に基づく年代決定法の4種に分類されるが,現在求められる数値年代の殆どは,放射年代測定法によるものである。
 主な放射年代測定法の概要を表−2に示す。このうち,14C法は,放射性同位元素である14Cが半減期5730年で14Nに壊変する原理を用い,地層中に含まれる有機物の14C濃度を測定し,生物が体内に炭素を取り入れなくなってからの年代(すなわち生物が死んでからの年代)を測定するもので,現在〜5万年前程度の年代を精度よく測定できる方法として最もよく用いられる方法である。
 また,表−2以外にも,238U,235U,232Thの放射改変を利用したウラン系列法,電子スピン共鳴現象より求められる試料の総被爆線量から,年代を測定する電子スピン共鳴(ESR)法等の放射年代測定法等がある。
 地質年代測定では,測定年代や試料の種類により適用可能な測定手法が限られることから,目的や条件に即した手法を適切に選定することが重要であり,測定結果を使用する側もこれらのデータの特性を十分考慮して使用する必要がある。

参 考 文 献

1)町田 洋ほか.第四紀学.朝倉書店,2003.
   

2)阿部勝征ほか.地震と活断層.ISU,1985.
   

3)櫻井彰雄.エネルギー技術者のための地盤・耐震学.丸善,1999.
   

4)地盤工学会生態系読本編集委員会.生態系読本−暮らしと緑の環境学−.地盤工学会,2002.
   



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