会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語 (182) 洋上風力のセントラル方式/グリーンスローモビリティ/V2H

 


洋上風力のセントラル方式
 洋上風力は,海域上に設置される風力発電システムであり,大きな導入ポテンシャルを持つと期待されている。一方で,海域の大半をしめる一般海域の海域利用の統一ルールがない上,海運や漁業などの先行利用者との調整ルールが不明確であることから,事業リスクが高い電源とされている。
 欧州においては,洋上風力の導入に向けて,政府などが導入計画を明確化し,環境アセスメントや系統接続などの立地調整を主導することによって,発電事業者のリスクを軽減する仕組みを採っている。この仕組みのことをセントラル方式という。
 例えば英国においては,英国国王に帰属する土地や権利の管理を行う法人が戦略的環境アセスメントを実施し,漁業や観光などの利害状況や,自然保護など調査結果に基づき,開発可能ゾーンを決定している。その後,洋上風力の発電事業者に対して入札を行い,落札した発電事業者は用地のリース料を支払って開発を行うしくみをとっている。
 日本では,日本版セントラル方式として,政府主導のプッシュ型案件形成スキームをとっており,初期段階から政府が関与し,より迅速・効率的に風況等の調査,適時に系統確保等を行うしくみの確立により案件形成の加速化を図っている。

参 考 文 献
・公益事業学会政策研究会,まるわかり電力システム改革2020年決定版,日本電気協会新聞部,2019.2.8,P160-161
・第 2 回 洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 資料 2-1(参照2021/5/11)

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グリーンスローモビリティ
 グリーンスローモビリティとは,電動で時速20 km 未満の速度で公道を走る 4 人乗り以上の公共交通である。グリーンスローモビリティの特徴として,以下の 5 つが挙げられる。

? 「Green」・・・「CO2 の排出が少ない」
・電気自動車であるため環境にやさしい。さらに,再エネ由来の電気を利用すれば CO2 フリーの乗り物となる。
? 「Slow」・・・「低速なので観光に適する」
・最高速度が時速20 km 未満なので景色や街並みを見るのに最適。
? 「Safety」・・・「速度制限で安全」
・最高速度が時速20 km 未満なので高齢者でも運転しやすい。
? 「Small」・・・「小型なので狭い道も通行できる」
・乗用車の 8 割の大きさのものもあり,狭い道でも通行可能。
? 「Open」・・・「開放感があり楽しい」
・窓ガラスがないため,風や音が感じられ乗っていて楽しい。
 上記の特徴から,地域交通の大幅な低炭素化と,ラストワンマイルの確保,観光振興,中心市街地の活性化など地域が抱える様々な交通課題の解決を同時に図れるものとして注目されており,全国で事業化が進められている。
 グリーンスローモビリティは車両寸法等に応じて,軽自動車・小型自動車・普通自動車に分類でき,定員 4〜8 人のゴルフカートタイプから,定員16人以下の電動低速バスタイプのものまで様々なタイプが運用されている。

参 考 文 献
・国土交通省 HP (参照2021/05/19)
 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_fr_000139.html
・環境省 HP (参照2021/05/19)
 https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/green_slow_mobility/index.html
・(公財)交通エコロジー・モビリティ財団(2019):グリーンスローモビリティの特徴と可能性

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V2H
 Vehicle to Home の略。電気自動車・プラグインハイブリッド自動車(EV・PHEV)に蓄えられた電気を住宅にも利用するシステム。災害等における停電の際のレジリエンス向上策としても期待される。
 システムを構成する機器は V2H 対応の EV・PHEV と V2H 機器(EV 専用パワーコンディショナー)。EV・PHEV は蓄電池の役割を担う一方,V2H 機器は住宅の電気を EV・PHEV へ充電する「充電スタンド」の役割と,EV・PHEV に蓄電した電気を住宅で使用できるように直流から交流へ変換する「パワーコンディショナー」の役割の両方を担う。

出典:(一社)次世代自動車振興センター HP http://www.cev-pc.or.jp/kiso/v2h.html

     
     
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