会誌「電力土木」

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でんたん

第40回 帝(たい)釈(しゃく)川(がわ)ダムと新(しん)帝(たい)釈(しゃく)川(がわ)発電所(中国電力株式会社)

 

 新帝釈川発電所は,広島県の北部にある神石高原町に位置し,高梁川水系帝釈川を水源とする帝釈川ダムにおいて最大使用水量10.0 m3/s を取水したのち,有効落差129.00 m を得て最大出力11,000 kW を発電するダム水路式発電所です。
 帝釈川ダムは,流域面積120.0 km2,総貯水容量14,278千 m3,ダム高さ62.43 m,堤頂長39.50 m,堤頂の標高372.00 m,洪水吐ゲート 4 門(トンネル式 2 門,堤体越流式 2 門)を諸元とする 3 類ダムで,発電用のダムです。
 帝釈川ダムは,1920年(大正 9 年)に着工し1924年(大正13年)に完成した当社最古のダムであり,当時としては国内最大級のダム高さでしたが,両岸絶壁をなす狭隘な地形部であったことから,工事資材運搬等,困難を極めました。
 また,その地形特性から堤頂長が,ダム高さの半分という類例のない絶好の場所であり,平面的にややアーチ形状をした重力式で,正面からの形は楔状をなし,表面は石張りと合理的な設計がなされていました。
 当時は,帝釈川発電所(出力4,400 kW)として運転開始しましたが,2003年(平成15年)から2006年(平成18年)にかけて保全対策工事(洪水処理能力の向上および構造上の補強)を実施のうえ,ダムの未利用落差の有効利用を図るため,圧力水路を有するダム水路式の発電所として新設し,新帝釈川発電所として運転開始しました。帝釈川発電所については,支川からの取水のみとし,規模を縮小(出力2,400 kW)して運転を継続しています。
 帝釈川貯水池(神龍湖)周辺は,国指定の名勝および比婆道後帝釈国定公園第 1 種特別地域に指定され,自然豊かなところで,特に秋の紅葉シーズンは多くの観光客で賑わっています。
 また,帝釈峡は日本 5 大名峡の一つに数えられ,庄原市と神石高原町にまたがる南北20 km の大渓谷です。
 渓谷には,中国自然歩道が整備されており,世界三大天然橋のひとつともいわれ国の天然記念物にも指定されている「雄橋」や,帝釈峡遺跡群中の最大遺跡「寄倉岩陰遺跡」,奇勝・奇岩で有名な石灰岩洞の「白雲洞」といった見どころもたくさんあります。
 神龍湖は,遊覧船が運航されており四季折々の雄大な景色を見ることもできるほか,周辺にも観光スポットや特産品がたくさんありますので,一度訪れてみてはいかがでしょうか。


【新帝釈川発電所】
広島県神石郡神石高原町
最大許可出力:11,000 kW
最大使用水量:10.00 m3/s
最大有効落差:129.00 m
【帝釈川ダム】
左岸:広島県庄原市東城町
右岸:広島県神石郡神石高原町
堤高:62.43 m
堤頂長:39.50 m
有効貯水容量:7,490千 m3

【帝釈川ダムへのアクセス】中国道 東城 IC より車で約20分

【写真】
1 帝釈川ダム(現在)    2 帝釈川ダム(保全対策工事前)
3 紅葉橋と遊覧船乗船場 
4 (左)新帝釈川発電所,(右)帝釈発電所

     
     
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