会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語 (179) SRS 工法/LNG バンカリング拠点/IPCC「1.5℃特別報告書」

 

SRS 工法
 SRS 工法(Seismic Retrofit of Existing RC pier used mortar for Shotcreat)は,既設 RC 橋脚の表面処理を行った後,補強材を既設橋脚面に接触配置し,所定のかぶりを確保するまでポリマーセメントモルタルを吹付けることにより,既設 RC 橋脚と一体化させ,耐震性能を向上させる工法である。

1. 適用範囲
・RC 巻立て工法により t=250 mm 以上巻立てると,建築限界・河積阻害率がオーバーしてしまう場合や橋脚基礎への負担増加が問題となる橋脚に適用される。
・ダム洪水吐ゲートピアへの採用事例も存在する。

2. 特徴
・補強材の取付け位置を既設橋脚表面とし,巻立て材料をコンクリートよりも強度特性(圧縮・曲げ・付着等)および耐久性に優れるポリマーセメントモルタルとする事で,巻立て厚を従来の RC 巻立て工法の約 1/5 に低減することが可能である。
・既設橋脚のかぶり部分を取り除き,そこに補強筋を接触配置することで,橋脚幅を増加させずに施工することも可能である。

・一度に施工できる範囲が広いため短時間で広範囲の安定した施工が可能となる。
・施工速度が速いため,工期が短縮され,経済性に優れる。
・補強筋背面へのポリマーセメントモルタルの充填性能に優れる。
・吹付け圧力が高いため,充填効果がよく,既設コンクリートとの接着性に優れる。


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LNG バンカリング拠点
 LNG バンカリング拠点とは,液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶(LNG 燃料船)への燃料供給を行う拠点のことである。2020年から国際海事機関による船舶の排出ガス規制が強化されることに伴い,環境負荷の少ない LNG 燃料船の増加が見込まれており,LNG バンカリング拠点が十分に整備されていないことが国際的な課題となっている。
 我が国は,世界最大の LNG 輸入国であり既存の LNG 基地が港湾に多数立地することから,LNG バンカリング拠点の形成に向け有利な環境が整っている。このため,2018年度に LNG バンカリング拠点を形成するために必要となる施設整備に対する補助制度が創設され,「伊勢湾・三河湾における事業」及び「東京湾における事業」の 2 事業が採択されるなど,LNG バンカリング拠点を形成するための支援が行われている。
 LNG バンカリング拠点を形成することにより,船舶の LNG 燃料化が促進されるとともに,我が国の港湾へのコンテナ船等の船舶の寄港数が増大し,港湾の生産性が向上することが期待されている。このため,国では世界最大の重油バンカリング拠点であるシンガポールとの協力を軸とした LNG バンカリング拠点のネットワーク構築に向けた国際的な取組を推進しており,周辺諸国に先駆けて我が国に LNG バンカリング拠点を形成することで,我が国港湾の国際競争力の強化を図っている。

参 考 文 献
1) 国土交通白書2018
 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h29/index.html
2) 国土交通省 報道発表資料 我が国初となる LNG バンカリング拠点形成へ 〜平成30年度 LNG バンカリング拠点形成事業を採択〜
 https://www.mlit.go.jp/report/press/port02_hh_000134.html



IPCC「1.5℃特別報告書」
 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)は,気候変動に関して科学的,技術的及び社会経済的な見地から包括的な評価を行い,5〜7 年ごとに評価報告書,及び不定期に特別報告書,技術報告書,方法論報告書を作成・公表している。
 2018年10月に公表された「1.5℃特別報告書」では,工業化以降(1850〜1900年を基準)の地球温暖化は現在の速度で進行すると2030〜2052年に1.5℃に達するものと述べている。また,地球温暖化を 2℃以上ではなく1.5℃に抑えることによって,多くの気候変動の影響が回避できることを強調しており,そのためには,世界の人為的な正味二酸化炭素排出量は,2030年までに2010年の水準から約45%減少させ,2050年頃に「正味ゼロ」を達成する必要があるとしている。

参 考 文 献
IPCC「1.5℃特別報告書」(英語)
 https://www.ipcc.ch/sr15/
IPCC プレスリリース・日本語訳(国際連合広報センター HP)
 https://www.unic.or.jp/news_press/info/30738/
IPCC「1.5℃特別報告書」の概要(環境省 HP)
 http://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/ar6_sr1.5_overview_presentation.pdf


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