会誌「電力土木」

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解説

最近の技術用語(178) エッジコンピューティング/ノンファーム型接続/SLAM

 

エッジコンピューティング
 エッジコンピューティング(Edge computing)とは,ユーザーにより近い位置にサーバーを配置してデータ処理を行う技術のことである。昨今,広く利用されるようになってきたクラウドサービスでは,インターネット経由でソフトウェアをダウンロードすることなくアプリケーションを使用できるようになっているが,今後 IoT(Internet of Things)が更に進展すると,膨大なデータがクラウドのデータセンターに集中することになり,トラフィックの混雑や遅延が生じる懸念が指摘されている。また,何らかの障害でクラウドのサーバーがダウンした場合,ユーザーはクラウドサービスが復旧するまで,データにアクセスすることができなくなる。一方で,利用者により近い位置にサーバーを配置するエッジコンピューティングの場合,通信コストを削減できるとともに,クラウドの処理負荷をエッジに分散できるため,通信障害が起こりにくいとされている。また,クラウドサービスに障害が生じた場合でも,エッジサーバーにデータを保存していれば,速やかにデータにアクセスすることができる。自動運転,顔認証によるセキュリティ管理,局所的で高精度な気象予測など,様々な分野でエッジコンピューティング技術を導入する試みがなされている。

参 考 文 献
1) 田中裕之,高橋紀之,川村龍太郎:IoT 時代を拓くエッジコンピューティングの研究開発,NTT 技術ジャーナル,Vol. 27, No. 8, pp. 59-63, 2015.
2) 山田峻也,渡辺陽介,高田広章:エッジコンピューティングを利用した自動運転車のための環境情報分散管理システム,日本ロボット学会誌,Vol. 38, No. 2, pp. 199-209, 2020.


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ノンファーム型接続
 再生可能エネルギーのさらなる導入促進のため,既存送電線の最大限有効活用を目指し「日本版コネクト&マネージ」の 1 手法として「ノンファーム型接続」が検討されている。
 「ノンファーム型(電源)接続」とは,電力広域運営推進機関の定めるルール(“先着優先”と“空き容量確保”)のもと,ある系統で「空き容量ゼロ」の状況でも系統設備増強コストを負担しない代わりに,他の基幹電源が稼働している場合など送電線の混雑時には出力制御することなどを条件として,新規の接続を可能とする方法である。
 送電線の増強に伴う費用負担を抑えつつ,接続希望が急増している再生可能エネルギーの接続量を増やすことを目的とするものであり,FIT 制度の見直しと並行して制度検討が進められている。
 なお東京電力 PG では2019年 8 月から,千葉県の一部の基幹系統にて「ノンファーム型接続」の試行的な取り組みとして,フィジビリティスタディと接続申込み回答への反映を開始している。また北海道電力ネットワークの 3 エリアでも,先行的な適用検討が進められている。

参 考 文 献
「送電線の有効活用と再生可能エネルギー導入に向けた取り組み」電気事業連合会 Enelog Vol. 30, 2018


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SLAM
 Simultaneous Localization and Mapping の略。自動車やロボット,ドローン等の移動体が,未知の環境においてセンサーの情報から自己位置推定(Localization)すると同時に自身周辺の環境地図を作成(Mapping)し,その地図情報を用いて障害物などを回避しつつ特定のタスクを実行する。
 自己位置推定のためのセンサーはタスクに応じて選定され,その種類により SLAM は大きく 3 種類に分類される。?Visual SLAM;カメラ画像によって距離計測を行う技術,?LiDAR SLAM;LiDAR(レーザースキャナ)から取得した点群データによって距離計測を行う技術。カメラより遠距離で高精度な測距が可能,?Depth SLAM;ToF センサーやデプスカメラを使用し距離計測を行う技術,Visual SLAM の苦手な特徴点の少ない環境や暗所における計測が可能。

     
     
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