仁淀川第三発電所は,西日本最高峰の石鎚山に源を発する仁淀川の中流に位置し,調整池である筏津ダムの堤体内に水車発電機を設置した大変珍しいダム式発電所です。河川流量が豊富で河床の砂礫層が厚いなどの諸条件を考慮した結果,最も経済的となったこの「堤体内型式」がわが国で初めて採用され,また,水車には低落差で効率の良い可動羽根をもつカプラン水車を使用しています。なお,平成30年度には水車・発電機などの設備余力を活用し,設備の変更を行わずに最大使用水量を増量(44→46 m3/s)して最大出力を増加(10,000→10,300 kW)させ,水力エネルギーのさらなる有効活用を図っています。
仁淀川は,毎年国土交通省が実施している全国の一級河川水質調査で何度も水質ランキング 1 位に選ばれており,その水の美しさから「奇跡の清流」と呼ばれています。高い透明度を誇り,水面と川底が青く輝くところから「仁淀ブルー」の愛称でも親しまれています。流域にはいくつもの「仁淀ブルー」スポットがありますが,中でもおすすめは,神秘的な青い滝壺で,光の量や角度により刻一刻と印象が変わり幻想的な光景が見られる「にこ淵」です。
発電所が位置する越知町は,高知県の中西部にある自然豊かな町で,町の西部には「日本植物学の父」と称される牧野富太郎博士が重要な研究フィールドとした横倉山があります。横倉山では,日本で最も古い 4 億年以上前の「コノドント」と呼ばれる海洋生物をはじめ三葉虫など多くの化石が見つかっているとともに,約1,300種もの植物が自生する植物の宝庫であり,山中で見られるほのかに発光するキノコは「地上の星」と呼ばれています。「横倉山自然の森博物館」では,横倉山を通じて地球の生立ちや越知町の歴史,牧野博士が愛した珍しい植物などについて学ぶことができます。また,この博物館は世界的な建築家で,建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」など数々の賞を受賞している安藤忠雄氏によって設計され,横倉山の自然と調和を奏でる建物です。
越知町の東隣に位置する佐川町を中心とした佐川盆地は西南日本外帯(秩父帯)の典型的な地質構造が分布し,日本列島の生立ちを探るうえで極めて重要な地域として古くから研究が進められてきました。「佐川地質館」では,佐川盆地をはじめ県内の地形や地質,町内外で採取された化石などが紹介されています。
発電所上流の仁淀川町にある秋葉神社には,火産霊命(ほぶすなのみこと)という火の神様が祀られており,毎年 2 月 9 日〜11日には,防災や災難除けを願って,土佐の三大祭りのひとつで高知県の保護無形民俗文化財にも指定されている「秋葉まつり」が開催されます。最終日に行われる,華麗な行列が集落を練り歩く「練り」や,長さ 7 m,重量 8 kg にもなるヒノキの棒の先に鳥の羽を付けた鳥毛(とりげ)を約10 m 離れた 2 人が投げ合い,キャッチする「鳥毛ひねり」は迫力満点です。
仁淀川第三発電所・筏津ダムと,見どころ満載の仁淀川流域にぜひお越しください。
【仁淀川第三発電所】
高知県高岡郡越知町
認可出力 10,300 kW
最大使用水量 46.0 m3/s
有効落差 26.25 m
【アクセス】
JR 佐川駅より車で約20分
高知龍馬空港より車で約80分
【写真】
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